「日本を降りる若者たち」 下川裕治

発売当初(2007)に話題になっていた本です。
私は今年(2010)にタイにダイビング旅行に行った時、現地にいた日本人ガイドさんが同い年で意気投合して、色々と話も聞いて、だから日本に帰ってきてから図書館で借りて読みました。

「外こもり」って言葉はこの本が生み出したんだっけ。
日本で数ヶ月まとめてかせいで、残りはバンコクで過ごすという生活は、あの頃のテレビにも取り上げられていた。タイに行った時はバンコクには寄らずにプーケットから船上生活でダイビング三昧だったので、バンコクがどんな雰囲気かは分からない。けど、プーケットであっても屋台の店は美味しくて安かった。「タイは歴史的に東南アジアで唯一植民地にならず、政情も比較的安定していたから、周辺国が戦争になるたびに人(料理人)が逃げてきて、だから東南アジア各国の料理が手軽に食べれる」と以前に聞いた。確かに冷房さえあれば生活がしやすい国なんだろうね。

この本では、「タイの女性達は旦那が働いている職場さえ知らない。なぜなら旦那は給料を入れないから。だから奥さん達が手に職をつけて家族を養う」って書いてあった。そういう生活は日本にいたら想像できないけど、映画:寅さんを見ていると、あの時代の日本は終身雇用が珍しく、たとえ職が無い状態でも家族・親戚を頼ればとりあえず食べることが出来たという事が分かる。

貧しくて政治があてにならない国ほど、親戚同士の助け合いが増えるのは世界共通なのかもね。けど、新婚旅行でメキシコに行って、現地にいた日本人ガイドさんと会話した時、「メキシコの人との結婚は考えないんですか」「うーん、日本人は勤勉で稼ぐと思われていて、この国では親戚中からあてにされるから、大変なんですよ」と言ってたから。どんな生活様式にも正負の面があるって事を、生の言葉で聞かされるのは1つの良い経験だね。

この本に書いてあるように、「日本での生活・人生設計が型にはめられすぎて、そこからの脱線に容赦が無く、だからこそ息苦しい」という意見は良く分かる。
「一日の出費を500円(宿代込み)などと決めながら、物価の安い国を半年、一年と歩いていく旅のスタイルである。若者はなぜ、そんな修行僧のような旅に出たのかといえば、その背後には、先進国に生まれ育った若者が抱き始めた閉塞感があった。このまま社会に出て、父親のようにがむしゃらに働いて自分の人生は充足するのだろうか・・・・という疑問であった。生きるだけで精一杯の時代をすぎ、いくつかの選択肢が目の前に提示されると、若者は急に不安になってしまうものらしい。幸せな人生探しという隘路に迷い込み、それを突き詰めていくと、出口がみつからなくなってしまうということだろうか

この本は「日本を降りた若者たち」に対して優しく、かつ冷静な視点で書いてる。著者自身が新聞記者をしながらも、取材半分・本気半分の外こもりをしていたからこそ、書ける視点。本って、最初の数ページをざっと読んで、そこで感じるものが無ければ、棚に戻してもいいと思う。私はこの部分にかなり納得したから全部読んだけど、非常にためになった本でした。

外こもりやバックパーカに興味が無くても、会社を辞めたくなったら、その前に読む方が良いと思う。やっぱり社会人を8年ぐらい続けていると、自分が教えてた新人達が入社3年目とか5年目とかで辞めていく事がある。そんな彼らと話す機会が無いからこそ、ここに書いておく気になった。辞める前にこの本を読んで欲しい。それだけの価値がある本だと思う。「会社を降りること」と「日本を降りること」の間には大きな差があるけれど、会社を降りて、そして、タイに流れ着いた人たちの軌跡。

そこから浮かび上がるのは、本当の意味において、社会人はどんな態度で会社や社会と接していかなくちゃいけないか? 
この本は、最初は外こもりする人たちを丹念に優しく追っていくのだけど、本の最後で、こう述べている。

「日本で頑張れた人はタイでも頑張れる。タイで頑張れた人は日本でも頑張れる。タイで頑張れた人のなかには、タイでの経験を生かして日本社会に復帰して企業した人も少なくない」

頑張るという言葉に疲れた人たちにこの結論は厳しい。けれど、これが事実なんだろうね。真理は人を小馬鹿にしたようなオヤジに聞かされるのでなく、こういう本で体感した方が良いと思うよ。

著者自身も結論がこうなった事がイヤだったのだろうね。
本の最後で、
「結局、日本人は頑張るという言葉を巡って人生が展開される、そうも思える。いや、日本人というより、資本主義の世の中ではどこの同じなのかもしれない<中略>突き詰めると、近代がどういう時代であったのか、そして、近代資本主義がもたらしさ豊かさに対する問いかけなのかもしれない。」
と近代資本主義まで話を広げて終わらせている。

人類は基本的な衣食住のために頑張る時代が長く続いたから、今みたな文化的?な生活のために頑張るというのは、ある意味、目標としてあやふやかつ絶対でもない。文化的という意味が子供部屋の数だとすれば、確かにあまりに小市民すぎるけど、それが日本の生活の中での、分かりやすいバロメータなのかもしれない。

個人的に最終的に思ったのは、「逃げちゃダメ」ってこと。頑張るとかじゃなく、気持ちのどこかで逃げる要素があったら、次も上手く行かない。もちろん会社を辞めてリフレッシュするのも大事だと思うし、別に会社にしがみつく必要も無いと思う。けど、この世には、次に繋がる負けがあるハズ。

「逃げちゃダメ」っていうのは、冷静に判断すれば厳しいと思う。本人としては「精一杯の結果」と思いたいけど、他人から見たら「逃げ」って判断される事も多いだろう。だからこそ、「次に繋がる負け」

次に繋がる負けってのは、今と未来が割合として5:5ぐらいだと喝破する姿勢なのだろう。今がどれだけ悪くても、その失敗を将来に繋げれればいいのだから、物事の意味は、今の形だけでは決まらない。もちろん、場合によっては1:9もあるかもしれない。けど、0:10は有りえない。それは心が折れたから0になったのだ。ギリギリの地点での「1」は何? それが一番大事だと思う。


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個人的には、この1こそがSoulだと思うし、だからR&B-Soulを聴き込んでいる。そんな意味では、最後は音楽に繋がるけど、この内容はあちらのTOPには置けないよね(笑




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