『新版 動的平衡』 福岡伸一

「生きる」のモデル化。自己を分解して捨てる価値。


三大欲求=食欲・性欲・睡眠欲は誰でも知っているけど、今の生命観は遺伝子と自己複製に毒されすぎ。千島学説にも興味がある立場として、生物学本流でここまで深い知的興奮を感じる本に出会うのは初めて。個の生命に着目すれば「エントロピーの法則に逆らう」ことが本質。それはちょっとでも生命について学んだ人にとっては常識的な生命観。けど、これはスタート地点よりは終着地点だと思っていた。まさかここから掘り下げれるとは。シュレディンガーはネゲントロピーという用語を作ったが、これは単なる逆語で概念を深める効果は零。この新版で追加された福岡氏のモデル化はノーベル賞のレベル。

 

この10年で日本はダメダメになった。

頭脳部分をGAFAに抑えられ、製造部分を台湾と中国に抑えられた。どちらももう逆転は難しい。それだけ両側ともプラットフォーム/エコシステムが出来上がっている。けど、この福岡氏のモデルに国全体を賭けることができたら逆転の余地があるかも。ここまで言い切れるのは「作用マトリックス・固有値1+k△」でモデル化した長沼氏だけだったが、福岡氏のモデルもそのレベルまで到達している。これは本サイトにおける最上級の褒め言葉です。特にES細胞やiPS細胞の解説が目から鱗なんだよね。小保方さんの時は山ほどニュースが溢れたが、この文章が一番頭と心に響く。

 

ガン細胞はES細胞と極めて似通った、おそらくは表裏一体の関係にある。私たちがもし、ガン細胞に再び正気を取り戻させ、人体組織の一部に分化することを思い出させることができたなら、私たちはガンを制御することができるはずである。しかし、長年の研究を経ても、未だガン細胞に再び「空気を読ませる」ことに誰も成功していない。おそらく、現段階では、私たちはガン細胞を制御するのとほとんど同じ程度にしか、ES細胞やiPS細胞を制御できないだろう。それは分化をコントロールすることに関して、同じ科学と同じ技術を必要とするからである。つまり過去、何度も何度も喧伝されたガン征圧の勇ましいプロミスが「果たされた」のと同じ程度にしか、再生医療へのバラ色のプロミスも果たされることはないだろう。私にはそう思える(P.170)

 

主観的な時間の流れは心臓の鼓動のスピードが作る。

ネズミにとっての1ヵ月が人間の1年に相当する。こういう生命観は『ゾウの時間、ネズミの時間』で常識となった。だとすれば何もしなくても10年ぐらいでこの本も常識になるかもね。けど、そのスピードじゃ遅い。特に昨年からIT業界や製薬業界が先導してリストラを進めている。国全体が本格的に負け始めているから。ここは好き勝手に書いている個人Blogだけどうちの会社のことは書かない。個人的な小さい不満を書く場所じゃない。けど、IT業界において45歳以上の希望退職を募る事と、残った人にこの本を渡す事はセット。それが分からん経営者は辞めさせろ。そもそも年齢で区切っている時点で世界レベルで見れば負け確定。単に給与体系が硬直→「給料をなかなか下げれない」のと「歳をとったら頭が固くなる」という先入観だけじゃん。

 

自己改善意欲と学習意欲だけなんだって。それは年齢とは関係ない。個人差の方が大きい。

年齢なんかよりこれらのモデルの価値を理解できるかどうかで判断する方がよっぽどマシ。そもそも人の能力の差を生み出すのは学歴でも地頭の良さでもない。真に大事なモデルをどれだけ理解して、どこまで応用できるか。それだけしかない。パターンじゃないんだよ。デザインパターンを筆頭にパワポ上のパターンとか世にパターンは溢れてる。パターンとモデルの違いが分かるだけでも出来る社員に近づける。

 

そんな意味では、この二つに加えて中込氏の『唯心論物理学の誕生』で紹介されたアーチ思考。この三つが僕にとっての三大モデル。久しぶりにAmazonで見たら絶版&値上がりは想定範囲内だけど15000円とはね。。そしてレビューが零。分かる。この本に生半可なレビューはかけない。なぜかって唯心論→この世は心・魂しかない→この現実世界世は生きている人の認識の共通部分でしかない って理論だから。いまの常識の真逆。だから流石にこの本の理解度で希望退職は無しでしょう。

 

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今日はAIモデルで底に落ちてた。ついついDEJAとELLEで3時間ぐらい遊んでしまった。。流石に逃げるのにもイヤになって夕方からこの本を読み始めた。この本を読んで分かった。動的平衡は知識・推論の世界でも当てはまる。この世に絶対的に正しい知識なんてない。現実世界が変わるのだから、知識もつねにアップデートしながら推論しなかん。その仕組みがない静的・単純線形拡張モデルのクソさ。福岡氏のこのモデルの核は生成でなく分解優先なこと。捨てる勇気。それはエゴとの関係も含めて今後広まっていくのだろう。

 




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